大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)584号 判決 1954年2月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

裁判所法三条によれば「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する」ものであり、ここに「法律上の争訟」とは法令を適用することによつて解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいうのである。本件村議会の予算議決は、単にそれだけでは村住民の具体的な権利義務に直接関係なく、村長において、右議決に基き、課税その他の行政処分を行うに至つてはじめて、これに直接関係を生ずるに至るのであるから、本件村議会の予算議決があつたというだけでは、未だ行政処分はないのであり具体的な権利義務に関する争訟があるとはいえず、従つて裁判所法三条の「法律上の争訟」に当るということはできない。また、本件のごとき村議会の議決に対し単にその効力を争う趣旨の出訴を認めた特別の法律の規定も存在しない。それ故、本件村議会の予算議決に対する出訴は不適法であつて、これと同趣旨の原判決は正当であり、これと異る論旨は採用できない。その他の論旨はいずれも「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二十五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例